講座内容
人は一人では生きられない。集団をつくって、あるいは集団の中で生きて行くためには、集団全体にかかわる事柄について決めなければならない。これが政治という営みである。共存のためには、多様性をふまえつつも、ある種の秩序が(少なくとも暫定的に)つくり出されなければならない。
人類は、それぞれの置かれた条件の下で、こうした課題に直面し、苦しみながらも、何とか対応しようとしてきた。その苦闘の一端にふれることは、私たち自身の問題にかんしても、多くの示唆を与えてくれる。
この講座では、私たちの政治体制の二つの重要な柱であるデモクラシーと自由主義について、その起源に遡りながら、批判的に眺めてみる。今日、議論の的となっている多くの具体的な問題の背景が理解できよう。
次に、「正しい」政治のあり方を見出そうとする試みの意義と限界とを追究する。最後に、私たちが政治というものとどう付き合って行くべきか、権力との関係という観点から考えてみたい。
第1週:デモクラシーとは何か
- デモクラシーの原型と政体論
- 議会制民主主義の起源
- 大衆デモクラシーの成立
- エリート理論によるデモクラシー批判
- 二つのデモクラシー概念
- 討議民主主義と闘技民主主義
第2週:自由に生きるとは
- 古代的自由と近代的自由
- デモクラシーと自由の相克
- 二つの自由概念
- 自由放任主義の系譜
- リベラリズムと福祉国家
- 自由な主体をめぐる考察
第3週:正義について考える
- 共通善の哲学
- 功利主義とその限界
- 公正としての正義
- 正義は普遍的か共同体毎のものか
- 正義は国境を超えるか
- 正しい戦争はあるか
第4週:権力をどう見るか
- 国民主権と国家権力
- 権力は非対称的か
- 権力は協力的か
- 主体をつくり出す権力
- 生権力がもたらすもの
- 権力をどう変えるか