講座内容
日々のニュースなどで人工知能(AI)の登場や、その活躍が取り上げられることが増えてきました。
「暮らしがより便利になる」という期待の一方で、「仕事が奪われてしまう」という不安の声も耳にします。しかし、AIとは一体どういうもので、何ができ、何ができない存在なのか、皆さんは具体的に説明できるでしょうか?
本講座では、AIの基本的な事項を学ぶとともに、社会の中でAIがどのように使用できそうなのか、大学や企業における具体的な研究事例を基に説明します。また、生活の中でAIと人間が関わる時、そこにどのような関係が生まれるのかについても、教育学や社会学の観点からお話します。
本講座が、社会の中で共に活躍するAIと人間の未来像、について思い描く手がかりになれば幸いです。
※本講座は、2020年9月に開講した第1回と同じ内容となり、課題の一部を変更しております。
Week1:人工知能(AI)研究概説
AIとは何かについてお話しします。「自ら学ぶ」と言われるAIが実際にはどのように学習しているのか、また、AIに学習可能な分野とは何か、ということについて、具体的な研究事例を基に概説します。
- イントロダクション
- AIとは何か
- 機械学習の基本
- ディープラーニングの基本
- AIの研究事例 画像認識(1)
- AIの研究事例 画像認識(2)
- AIの研究事例 音声認識(1)
- AIの研究事例 音声認識(2)
- AIの研究事例 自然言語処理(1)
- AIの研究事例 自然言語処理(2)
Week2:産業界におけるAI活用
産業界におけるAI活用についてお話しします。自動運転で必要となる画像認識やスマホの音声エージェント、さらに医療現場で用いられる医薬品開発や病状診断、個別化医療について、各分野を牽引する企業の方にお話ししていただきます。
- イントロダクション
- 車載画像認識
- 人物画像認識
- 音声エージェント
- コールセンターAI
- 医薬品開発(1)
- 医薬品開発(2)
- 病状・症状診断補助(1)
- 病状・症状診断補助(2)
- 個別化医療(1)
- 個別化医療(2)
Week3:AI時代の「教育」を考える
最先端のテクノロジーを活用する教育情報学の視座から「学び」の本質を問うていきます。今後、AIが急速に社会の隅々に浸透する「AI時代」において、教育現場はどう変わらなければならないのか、そして、人間本来の「学び」はどのように変わるのか、ということについて考えてみます。
- イントロダクション
- 「教育」の現場からAIに目を向ける
- AIはどのように学習するか?(1)
- AIはどのように学習するか?(2)
- 「プログラミング教育」必修化の目的と背景
- 「教育」とコンピュータの深い関係
- 「頭が良い」とはどういうことか?
- AI時代における「教育」の再考 研究プロジェクト紹介(1)
- AI時代における「教育」の再考 研究プロジェクト紹介(2)
- AI時代の「教育」を求めて
Week4:AI・ロボットから人間を考える
AIと人とのインタラクションが、学術研究上も社会実装上も重要であることをお話しします。特に、社会の中で発達する人間を、ロボット上にモデル化するという研究事例を中心に、ロボットやAIに興味のある人にも、人間に興味のある人にも意義のある内容をお話しします。
- イントロダクション
- 序論:身体をもった人工知能とのインタラクション
- 構成論的アプローチ(1):つくることで理解する
- 構成論的アプローチ(2):AIが身体をもつことの意味
- 認知発達ロボティクス(1):社会的環境に適応していく身体
- 認知発達ロボティクス(2):視線の交流から社会的学習へ
- 認知発達ロボティクス(3):コミュニケーションの発現
- ロボットと自閉症研究(1):コミュニケーション障害として
- ロボットと自閉症研究(2):他者の心を想像する力
- まとめ:AI・ロボットから人間を理解する
Week5:AIロボットは家族の一員になれるか?
「AIロボットは家族の一員になれるか?」というリサーチ・クエスチョンに対する解を探求します。同時に、「家族とは何か?」、「人間とロボットの関係はどうなるのか」等の社会学的問題にも取り組みます。
- イントロダクション
- 社会に進出する人工知能
- ジェミノイド-Fとaiboのどちらを選ぶか?
- 筒井康隆のSF短編小説
- 2つのサブ・リサーチ・クエスチョン
- 家族の変遷
- 家族の一員としてのペット
- 家族の一員としてのロボット?
- ロボットが家族の一員になることの意味
- 行動科学・社会学の問い直し
Week6:AI社会の未来展望
「AI社会の未来展望」と題して、東北大学の教員が企業の方々を交えて対談を行います。AIが今後社会の中でどのように使われていくのか、それぞれの専門家が考える未来像を語っていただきます。
- 人工知能への期待と将来展望について
- AI エレクトロニクスの展望 –AI倫理とセキュリティ–
- AI エレクトロニクスの展望 –自動運転での活用–
- AI エレクトロニクスの展望 –FA分野での活用–
- AI エレクトロニクスの展望 –材料分野での活用–
- 未来医療の展望 –個別化医療とAI–
- 未来医療の展望 –AI創薬の未来–
- 未来医療の展望 –AIホスピタル–
講師・スタッフ紹介
金子 俊郎(かねこ としろう)
東北大学大学院工学研究科 教授
人工知能エレクトロニクス卓越大学院 プログラムリーダー
1969年7月仙台生まれ。1997年東北大学大学院工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。東北大学大学院工学研究科助手、同助教授・准教授を経て、2012年より現職。専門はプラズマ科学。核融合プラズマの基礎実験研究、液体と接触するプラズマを用いたナノ物質合成、細胞・生体・植物機能制御等の様々なプラズマ応用研究に従事。人工知能エレクトロニクス卓越大学院の活動を通して、人工知能のこれらの解析への活用とともに、将来のプラズマ研究への新たな応用に関心を持っている。
主な著書
中山 啓子(なかやま けいこ)
東北大学大学院医学系研究科 教授
1960年9月東京生まれ。
東京医科歯科大学医学部卒業後、同大学院医学履修課程修了。米国ワシントン大学ポスドク、九州大学生体防御医学研究所准教授を経て現職。
専門は分子生物学・細胞生物学、ゲノム医学、腫瘍学。
乾 健太郎(いぬい けんたろう)
東北大学大学院情報科学研究科 教授
専⾨は知能情報学、⾃然⾔語処理。コンピュータによる⾔語情報や知識の⾃動編集、それを⽀える⼈⼯知能の基礎研究に従事。
1967年⼤阪府⽣まれ。1995年東京⼯業⼤学⼤学院情報理⼯学研究科博⼠課程修了。博⼠(⼯学)。同年同学助教、1998年九州⼯業⼤学助教授、2002年奈良先端科学技術⼤学院⼤学助教授を経て2010年より現職。理化学研究所AIPセンター⾃然⾔語理解チームリーダー、国⽴情報学研究所客員教授兼任。国際論⽂誌Computational Linguistics編集委員、情報処理学会理事・論⽂誌編集委員⻑、同会⾃然⾔語処理研究会主査等を歴任。現在、⾔語処理学会副会⻑、⽇本学術会議連携会員、NPO法⼈ファクトチェック・イニシアティブ理事。
張山 昌論(はりやま まさのり)
東北大学大学院情報科学研究科 教授
1992年3月東北大学工学部電子工学科卒業、1994年3月東北大学大学院 情報科学研究科情報基礎科学専攻博士課程前期修了、1997年3月東北大学大学院 情報科学研究科情報基礎科学専攻博士課程後期修了、現在、東北大学大学院情報科学研究科教授、知能システムのための高性能・低消費電力な計算システムに関する研究に従事。
大町 真一郎(おおまち しんいちろう)
東北大学大学院工学研究科 教授
東北大学大学院工学研究科博士後期課程修了。
東北大学情報処理教育センター助手、東北大学工学部助手、助教授、准教授を経て2009年より現職。
パターン認識、画像処理、機械学習などの研究に従事。
主な著書
伊藤 彰則(いとう あきのり)
東北大学大学院工学研究科 教授
1991年東北大学大学院工学研究科博士課程後期修了。博士 (工学)。同年同大応用情報学研究センター助手。1992年同大情報処理教育センター助手。1995年山形大学工学部講師。現在、東北大学大学院工学研究科教授。音声言語情報処理、音声信号処理、音楽情報検索などの研究に従事。日本音響学会会長。
主な著書
鈴木 潤(すずき じゅん)
東北大学データ駆動科学・AI教育研究センター 教授
慶應義塾大学理工学部数理科学科卒業、同大学院理工学研究科計算機科学専攻修士課程修了。同年、日本電信電話株式会社入社。
2018年東北大学大学院情報科学研究科 准教授を経て、2020年より現職。博士(工学)。
主として自然言語処理、機械学習、人工知能に関する研究に従事。
主な著書
渡部 信一(わたべ しんいち)
東北大学大学院教育学研究科 教授
1957年仙台生まれ。
東北大学教育学部卒業、同大学院博士課程前期修了。博士(教育学)。
東北大学大学院教育情報学研究部教授、同研究部長などを経て、現職。
専門は、教育学(教育心理学)・認知科学。
これまで、AIやロボットの学習と人間の「学び」の関係や違いについて研究をしてきた。最近は、間もなく到来するAI時代における私たち人間の「生き方」や「学び」について興味を持っている。
主な著書
小嶋 秀樹(こじま ひでき)
東北大学大学院教育学研究科 教授
1966年東京生まれ。
1994年電気通信大学大学院電気通信学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。同年、郵政省通信総合研究所(現在の情報通信研究機構)研究官。1999年主任研究官。2008年宮城大学事業構想学部教授。2017年東北大学大学院教育情報学研究部教授を経て、現職に至る。専門は認知発達ロボティクス。
情報科学・ロボット工学だけでなく、一般言語学、発達心理学、進化心理学、脳科学、比較認知科学といった多視点から人間性の本質やその成り立ちを解明することに興味をもつ。
主な著書
佐藤 嘉倫(さとう よしみち)
東北大学大学院文学研究科 教授
京都先端科学大学人文学部 学部長
1957年10月東京生まれ。
東京大学文学部卒業後、同大学院修士課程、博士課程を経て横浜市立大学専任講師。同助教授、東北大学文学部助教授を経て、現職。専門は行動科学・社会学。
信頼関係の生成、社会的不平等の生成、社会の変動過程をゲーム理論やコンピュータ・シミュレーションなどで解明している。
主な著書
企業の講師紹介 ※講師の所属・役職は収録当時のものです
川崎 敦史(かわさき あつし)
株式会社 東芝 研究開発センター
知能化システム研究所 メディアAIラボラトリー
車載向け環境認識技術の研究・開発に従事。
白川 悠太(しらかわ ゆうた)
株式会社 東芝 研究開発センター
知能化システム研究所 メディアAIラボラトリー
コンピュータビジョン、人物行動認識の研究・開発に従事。
大庭 隆伸(おおば たかのぶ)
日本電信電話株式会社 メディアインテリジェンス研究所 主任研究員
1979年北海道生まれ。
東北大学工学部卒業後、同大学院博士前期課程を経てNTTに入社。その後、同大学院より博士号を取得。NTTドコモでの勤務経験を経て、現職。
専門は音声言語処理技術。機械と人のコミュニケーション技術に関する研究開発とその実現に向けた取り組みに従事。
青島 健(あおしま けん)
エーザイ株式会社 hhcデータクリエーションセンター データサイエンスラボ 部長
東京工業大学 物理情報工学専攻 博士後期課程を卒業後、三井情報開発株式会社バイオサイエンス本部研究開発部長、エーザイ株式会社主幹研究員、同社バイオマーカーユニット統轄を経て、現職。
専門はバイオインフォマティクス・生物統計。データに基づく創薬仮設の生成、バイオマーカーによる個別化医療の実現、システムズバイオロジなどのデータ駆動型創薬に関心をもつ。
主な著書
赤坂 亮(あかさか りょう)
KPMGコンサルティング株式会社
ヘルスケア・ライフサイエンス、ディレクター
1977年宮城県石巻市生まれ。
東京医科歯科大学大学院バイオ医療オミックス情報学を修了。
NECで製薬企業向けのシステム企画・開発業務、日本IBMでライフサイエンス事業を中心とした医療ビッグデータ解析による価値共創や、AI創薬による新薬開発プロジェクト、日本で初めてのイノベーション拠点であるPHILIPS Co-Creation Centerにて医療現場、健康・予防領域のアンメットニーズを解決する新しいソリューションやサービスモデルの創出活動など多数従事。 2021年7月より現職。
⼤井 潤(おおい じゅん)
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)執⾏役員経営企画本部⻑
東京⼤学法学部を卒業後、⾃治省(現総務省)に⼊省。総務省⾃治財政局財政課財政企画官などを歴任し2013年にDeNA⼊社。その後ヘルスケア事業部⻑を経て⼦会社のライフサイエンス代表取締役社⻑に就任。
現在はDeNA執⾏役員経営企画本部⻑として会社の経営企画全般を担っている。