藤原 帰一
東京大学大学院法学政治学研究科教授。専門は国際政治学。東京大学法学部卒業、同大学大学院博士課程単位取得退学。広島県の「国際平和拠点ひろしま構想」(2012年~)策定委員会委員であり、その一環として開始された「ひろしまラウンドテーブル」の議長を務める。『戦争を記憶する:広島・ホロコーストと現在』(講談社現代新書、2001年)、『平和のリアリズム』(岩波書店、2004年、石橋湛山賞受賞)など多数の著書がある。写真©K. Yamashita
本授業は全5回の講義(授業形式と有識者・専門家と講師との対談形式の融合)を通して、原爆投下という歴史的経験を背景に、核兵器廃絶、さらにはより広い視座から平和を考える拠点としての広島から、核と平和をめぐる国際政治について考える。※第1回~3回の初回は2018年12月開講。
第4回:「平和への自覚:被災から復興へ」
冷戦の終結が、内戦・地域紛争、さらにはテロの頻発ももたらすなかで、平和維持・構築、戦後復興といった取組の重要性が高まっていった。被爆の惨劇から復興を遂げた広島は、核廃絶問題だけでなく、より広い視野で平和を考える地としての「自覚」が芽生え、広島として果たすべき「使命」を見出していく。そうした広島の活動について、特に平和構築分野での貢献や平和の担い手の育成に焦点を当てて考える。
第5回:「広島からの平和:過去・現在・未来」
平和とは何か。誰にとってのどのような平和があるのか。何が平和を妨げ、どのようにして平和が創られていくのか。被爆経験を出発点として広い視座で平和を考える地としての広島がなすべきことについて考える。
―――【参考】―――――――――――
第1回
「広島:廃墟からのスタート」
広島を「広島」たらしめたのは、1945年8月の人類史上初の原爆投下であった。その被爆の惨禍が国内に広く認知された契機は1954年の第五福竜丸事件である。原水爆禁止運動は国内、さらには世界で急速に高まりをみせ、広島はその中心としてシンボル化していった。核兵器廃絶および平和を考える出発点としての被爆の経験・実相を振り返るとともに、核廃絶への希求の中心的存在として広島が存在する意味を、核兵器の登場が国際政治・安全保障問題にもたらした影響や変動とともに、第二次世界大戦末期から冷戦初期の時期の動向に沿って考える。
第2回
「理想と現実:核をめぐる冷戦期・冷戦終結直後の国際政治」
冷戦期には米ソ核軍拡競争が激化し、これと並行して核兵器の拡散も進行した。他方で、そうした冷戦下の核の脅威は、米ソ核軍備管理、核不拡散体制、あるいは欧州などでの核廃絶運動を生み出していく。米ソあわせて最大6万発もの核兵器を保有して対峙した冷戦が終焉を迎えた時、世界は核軍縮の進展に期待を高めた。そして実際、米露(ソ)による大幅な核兵器削減、核廃絶決議の採択、NPTの無期限延長、CTBTの成立といった一定の成果はあった。だがその背後では、核を取り巻く国際情勢の複雑化が始まっていた。核廃絶への希求と核をめぐる国際政治の現実について、冷戦からその終結直後までの動向を考える。
第3回
「複雑化する国際情勢:核をめぐる新たな脅威と現代的課題」
オバマ大統領によるプラハ演説は「核兵器のない世界」の機運を一気に高めたが、核軍縮・不拡散を巡る動向は、そうした期待を大きく裏切るものであった。国際システムの変動、安全保障環境の複雑化と軌を一にして、核の脅威は多様化し、核保有国などは核抑止の重要性を再認識しはじめた。一方で、核軍縮の進展しない状況に対する強い不満は、核問題の「脇役」とみなされてきた非核兵器国や市民社会の主導によって核兵器禁止条約の策定へと収斂していく。核をめぐり二分化する国際情勢のなかで、広島、日本、世界はこれから、核兵器の問題にどのように向き合っていけばよいのかを考える。
東京大学大学院法学政治学研究科教授。専門は国際政治学。東京大学法学部卒業、同大学大学院博士課程単位取得退学。広島県の「国際平和拠点ひろしま構想」(2012年~)策定委員会委員であり、その一環として開始された「ひろしまラウンドテーブル」の議長を務める。『戦争を記憶する:広島・ホロコーストと現在』(講談社現代新書、2001年)、『平和のリアリズム』(岩波書店、2004年、石橋湛山賞受賞)など多数の著書がある。写真©K. Yamashita
国連訓練調査研究所(ユニタール) 持続可能な繁栄局長(広島事務所長兼務)。米国ウエストバージニア大学心理学部卒業後,米国コロンビア大学にて国際公共政策修士号取得。18年に及ぶ国際連合勤務,その後,国連開発計画(UNDP)ニューヨーク本部,ベトナム事務所,サモア太平洋地域事務所,インドネシア事務所にて活動。2014年より国連ユニタール広島事務所長。2019年よりユニタール持続可能な繁栄局長(広島事務所長兼務)。気候変動適応を含む環境問題,防災,ジェンダー,平和構築などの分野において,アフリカ,中東,アジア,太平洋諸国を支援。国連の以前に九州電力企画部にて勤務。
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